黒を選びつづけるということ。
黒が好きというより、黒以外を選ぶ理由が見つからなくなった。その経緯について。
黒が好き、というより、黒以外を選ぶ理由が見つからなくなった、という方が正確になる。最初から黒への執着があったわけではない。気づいたら手元のものが黒に揃っていて、そこに居心地の良さを感じていた。
選択肢が減ることの静けさ
色を黒に統一すると、選ぶことへの疲弊が減る。財布と鍵とペンとバッグが全部黒なら、何かを買い足すときの基準が一つに定まる。それが黒として成立するか、しないか。それだけを考えればいい。
選択肢が少ない方が、一つひとつの選択に集中できる。
夜との親和性
夜を好むことと、黒を好むことは無関係ではない。夜は余計なものが見えにくくなる。輪郭が溶けて、本質だけが残る時間帯で、黒いものは昼間でも、その感覚に近い何かを持っている。目立たないのではなく、余計な主張をしていないだけで、そこにある。
夜の静けさと、黒い道具の佇まいは、同じ種類のものになる。
純度について
完全な黒ではないものも、選ぶことがある。ミッドナイトと名乗る MacBook Air は、角度によってダークネイビーの顔を見せる。それを例外として迎え入れるのは、色の純度より佇まいの誠実さを優先しているためだ。
黒を基準にするのは、黒に固執するためではない。それが一番ノイズが少ないから、という実用的な理由でもある。
例外を許すこと
黒で揃えることは、完全主義とは少し違う。完全に黒いものだけを選ぶと、選べる道具はかなり減ってしまう。ロゴ、金具、内装、ディスプレイ、素材の反射。どこかに黒ではない部分が出てくる。そのすべてを拒否すると、使いたいものまで手元から消えてしまう。
だから、例外の基準を持つ必要がある。見える場所にあるか。理由があるか。全体の静けさを壊しているか。黒でない部分があっても、そこに納得できるなら受け入れる。
黒を選びつづけるためには、黒以外をどう扱うかも決めておく必要がある。
手元の風景
黒いものが増えると、手元の風景が変わる。机の上、バッグの中、ポケットの中。ひとつひとつは小さな道具でも、色が揃うと全体が一つの環境になる。そこに余計な色が入らないだけで、見たときの負荷が下がる。
これは美意識であり、作業環境の設計でもある。視界が静かだと、考えることに使える余白が増える。黒を選ぶ理由は、最終的にはそこに戻ってくる。
続けることについて
黒で揃えることは、一度決めたら維持が楽になる。新しく何かを買うとき、黒がなければ候補から外れる。それだけで選択が速くなり、そうして積み上がった手元のものたちが、時間をかけて一つの風景になっていく。
それが気に入っている。風景が静かだと、考えることに深く集中できる。