ステッドラー 925 35 All Black、削ぎ落とした先の形。
黒いシャープペンシルは多いが、ここまで余計なものがないものは少ない。925 35 All Black について。
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ステッドラー 925 シリーズは、シルバーの 925 25 が標準モデルで、ネイビー(Night Blue)系が 925 35 にあたる。All Black はその 925 35 のバリエーションで、型番でいえば 925 35-05B のように末尾へ B が付く。それを承知のうえで選んでいる。型番がどの系統に属するかより、手元に置いて毎日触るものとして、これが黒として成立しているかどうかのほうを重視していた。
手に持ったとき
まず、重い。それも、いい意味での重さになる。オール黒のアルミニウムボディは、同価格帯のシャープペンシルと比べて明らかに密度が違う。グリップのローレット加工は細かく均一で、持ったときに手へ吸い付くような感覚がある。
クリップも、消しゴムのキャップも、リングも、すべて黒で揃う。どこを見ても余計な色が入ってこない。
道具としての潔さ
機能は最小限で、芯を繰り出す、筆記する、それだけに絞られている。余計な機構がないぶん、壊れる場所も少ない。ドラフティングペンシルの設計思想はそういうもので、この価格帯でその哲学が貫かれているところに誠実さがある。
軸は細い。太いグリップが好みの人には合わないかもしれないが、ペンを持つ感覚そのものが好きな人には、この細さが指の動きを邪魔しない。
書く速度に合う
このペンは、ゆっくり書くより、一定の速度で線を引くと気持ちいい。芯先の見え方がよく、紙に対してどの角度で触れているかが分かりやすいためだ。製図用の道具としての出自があるぶん、線を正確に置くことに向いている。メモを雑に書くときでも、その精度が手元に残る。
筆記具に過度な装飾はいらない。書く、線を引く、考える。その動作の邪魔をしないことが、何より効いてくる。
向かない人
柔らかい書き心地が好きな人には、少し硬く感じるかもしれない。金属軸の重さもあるし、グリップのローレットも明確に出る。軽いプラスチック軸のシャープペンシルのような気軽さはない。手元に道具の存在を感じながら書くタイプのペンになる。
その存在感が黒で抑えられているから、重さと静けさが両立している。
黒として
All Black という名前を冠しているだけあって、黒に妥協がない。艶消しのブラックアルマイト処理は、光を吸収するように沈んでいる。使い込んで傷がついても、アルミの地肌が出ることなく黒のまま変化していく。経年変化が、品の喪失ではなく記録の蓄積に見える。
この価格でこれを出すこと
千円台で、この質感が手に入る。それはコスパという言葉で片付けたくない事実で、ステッドラーがこの設計を長年維持していることへの敬意として受け取っている。安いから選ぶのではなく、この値段でこれを作っていること自体が、この道具の説得力の一部になる。
毎日触るものが、毎日裏切らない。それで足りる。