Sony WH-1000XM5 ブラック、静けさのための道具。
ノイズキャンセリングは静けさを作る。黒いヘッドフォンが、その静けさをビジュアルとして体現している。
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ノイズキャンセリングは、静けさを能動的に選ぶための道具になる。周囲の音を消すと、思考の密度が上がっていく感覚がある。Sony WH-1000XM5 のブラックは、その機能とビジュアルが一致している数少ないヘッドフォンに入る。
外観について
正面から見ると、ヒンジがなく、ヘッドバンドからイヤーカップまでが一体的につながって見える。WH-1000XM4 から設計が変わって折りたたみ機構がなくなり、その代わりに視覚的なシンプルさが増した。Sony のロゴは両サイドに入っているものの、ブラックのボディに馴染んで主張しない。
マットな質感は汗や指紋が目立ちにくく、長く使っても見た目の清潔感が保たれる。ヘッドフォンは顔の隣に置く道具だけに、質感の劣化が視界に入りやすい。その点で、マットブラックの目立ちにくさは実用的な意味を持っている。
ノイズキャンセリングについて
性能は同価格帯で最高水準と評価されている。飛行機や電車、エアコンといった低周波のノイズはほぼ消える。人の声のような高周波は少し残るが、音楽や作業への集中を妨げるほどではない。外音取り込みモードの自然さも優秀で、着けたまま会話もできる。
作業道具として
このヘッドフォンを評価しているのは、音質だけが理由ではない。作業を始める前に装着すると、環境が一段階切り替わる。音楽を流していなくても、周囲の音が遠ざかるだけで思考の輪郭がはっきりしてくる。カフェでも自宅でも移動中でも、その切り替えを同じ手順で作れることが大きい。
道具として強いのは、性能が高いこと以上に、毎回同じ状態を再現できるところになる。集中したいときに、決まった手順で静けさを用意できる。その意味で、これは音を聴く道具というより、場所の条件を整える道具に近い。
装着感と存在感
軽いわけではないが、長時間つけていても負担は少ない。側圧は強すぎず、イヤーパッドも柔らかい。頭に乗せた瞬間の密閉感はあるものの、押さえつけられている感じはしない。数時間単位で使うことが多い道具だけに、ここに違和感があると、どれだけ見た目が良くても結局使わなくなる。
黒いヘッドフォンは、顔の横に大きな黒を置く道具でもある。だから形がごつすぎたり、ロゴが強すぎたりすると、視覚的な主張が勝ってしまう。WH-1000XM5 は曲線がなだらかで、パーツの切れ目が少ない。黒い塊として見たときに、余計な線が少ないところがいい。
気になる点
折りたためないことは、人によっては弱点になる。ケースに入れるとそれなりに大きく、バッグの中で完全に存在を消せるわけではない。荷物を極限まで減らしたい人には、イヤホンのほうが向いている。
それでもこれを選ぶのは、耳を覆うことで生まれる静けさによる。イヤホンでは作れない距離感がある。外の世界とのあいだに、物理的な黒い層を一枚挟む。その感覚に、この道具の価値が宿っている。
黒として
ブラックの WH-1000XM5 は、付属するケーブルまで黒で揃っている。細部まで黒のヘッドフォンは意外と少なく、ケーブルだけシルバーや白というモデルは多い。ワイヤレスで使うのでケーブルの出番は少ないが、収納ポーチの中まで黒で統一されているのは気持ちがいい。
装着するとノイズが消える。そのとき視界には黒いヘッドフォンが入っている。静けさが、外からも中からも成立している。